年に一度、アイスホッケーの国際大会が行われていることをご存知でしょうか?
もちろんこの大会には、日本代表も毎年参戦しております。
今回はそのアイスホッケー世界選手権(IIHF World Championships)について、リーグの仕組みや日本代表の位置付けについて詳しく解説いたします。
アイスホッケー世界選手権(IIHF World Championships)とは

アイスホッケー世界選手権(IIHF World Championships)は、国際アイスホッケー連盟(International Ice Hockey Federation: 略してIIHF)が毎年開催する、各国代表選手たちによって世界一を競い合う国際大会です。
男子の大会は1930年から続く長い歴史を持ち、女子の大会も1990年から本格的に開催されています。
この世界選手権での成績は、IIHF世界ランキングに直結するため、各国にとって非常に重要な大会と位置づけられています。
男子は3つ、女子は2つのカテゴリ
アイスホッケー世界選手権は、以下のカテゴリ別にそれぞれ大会が開催されます。
- 男子
- フル代表:World Championships、略してWC
- U20(20歳以下):World Junior Championships、略してWJC
- U18(18歳以下)
- 女子
- フル代表
- U18(18歳以下)
ディビジョン分けと、自動昇格・降格
参加国は、それぞれのレベルに応じて複数のディビジョン(Division)に分かれており、各ディビジョンでは通常1週間かけてリーグ戦が行われ、順位が決定します。
最上位のディビジョン(トップディビジョン)では、リーグ戦に加えてトーナメントも実施されます。
もっとも注目されるであろう男子フル代表の大会は毎年4月〜5月頃に開催され、世界各国の代表チームが国の威信をかけて戦います。
国によっては、代表チームを持たないカテゴリもあったりするので、参加国数に偏りがありますね。
男子フル代表 | 男子U20 | 男子U18 | 女子フル代表 | 女子U18 | |
---|---|---|---|---|---|
トップディビジョン (Top Division) | 16カ国 | 10カ国 | 10カ国 | 10カ国 (日本はここ!) | 8カ国 (日本はここ!) |
ディビジョンⅠ グループA (Divison Ⅰ Group A / ⅠA) | 6カ国 (日本はここ!) | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 |
ディビジョンⅠ グループB (Divison Ⅰ Group B / ⅠB) | 6カ国 | 6カ国 (日本はここ!) | 6カ国 (日本はここ!) | 6カ国 | 6カ国 |
ディビジョンⅡ グループA (Divison Ⅱ Group A / ⅡA) | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 |
ディビジョンⅡ グループB (Divison Ⅱ Group B / ⅡB) | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 |
ディビジョンⅢ グループA (Divison Ⅲ Group A / ⅢA) | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 | 6カ国 |
ディビジョンⅢ グループA (Divison Ⅲ Group B / ⅢB) | 6カ国 | 4カ国 | 6カ国 | 5カ国 | 6カ国 |
ディビジョンⅣ (Divison Ⅳ) | 6カ国 | – | – | – | – |
合計 | 58カ国 | 48カ国 | 48カ国 | 45カ国 | 44カ国 |
開催期間 | 4月〜5月 | 12月〜1月 | 4月 | 4月 | 1月 |
また、各ディビジョンの上位チームは翌年の上位ディビジョンへ自動昇格し、最下位チームは自動降格するため、常にリーグ内の競争が保たれています。
世界選手権の開催ホスト国
世界選手権の各リーグは、それぞれ所属国の中からホスト国が選出され、その国で開催されます。
例えば、2024年ディビジョンⅠグループA(2部)はイタリアで開催されました。
今年2025年はルーマニアで開催されます。どちらも日本が同リーグで戦う相手です。
もちろん日本でも開催されたこともあります。

直近では、2008年に男子フル代表の世界選手権ディビジョンⅠグループBの大会が札幌市にして開催されました。
その大会では、日本代表は惜しくも銅メダルとなり、リーグ残留となりました。
アイスホッケー日本代表の”世界での現在地”

男子フル代表:2部〜3部を行き来

2020年・2021年はコロナ禍のため不開催
アイスホッケー男子日本代表チームは、2004年以来、20年以上もの長い間トップディビジョンでプレーできていません。
また、2016年に3部(ディビジョンⅠ グループB)に降格してからは、7年間もの間、2部に昇格することができませんでした。
しかし、2023年にやっと3部で優勝し、2部に昇格。
昨年(2024年)のひさしぶりの2部での世界選手権では、強豪国相手を苦しめる大接戦を繰り広げましたが、1勝4敗でギリギリ2部に残留。
アイスホッケー世界選手権において、1部(トップディビジョン)と2部(ディビジョンⅠ グループA)の間では、毎年2チームが自動的に昇格・降格します。
そのため、2部のチームは6チームのうち2位まで入れば良いので、他のディビジョンに比べて昇格のチャンスが比較的高いと言えます。
2025年4月末より、この世界選手権ディビジョンⅠ グループBが開催されます‼️
日本代表を全力応援しましょう🔥🇯🇵
▼日本が戦う2025世界選手権ディビジョンⅠ グループBについてと、今回の相手国の分析記事はこちら
女子フル代表:最近はずっとトップディビジョン

2014年と2018年はオリンピック開催年のため、2020年はコロナ禍のため不開催
1990年から始まった女子アイスホッケー世界選手権。
アイスホッケー女子日本代表は開催当初から参戦し、そこからずっとトップディビジョンと2部を行き来しておりましたが、2019年大会以来、7大会連続でトップディビジョンに残留し続けています。

男子と比べると、女子アイスホッケー日本代表は世界においても素晴らしい地位を確立しております。
これまでの最高順位は、2022年の5位。
今回はこの順位を超えてほしい!
男子U20代表:近年やっと3部で安定、2部へも

2021年はコロナ禍のため不開催
男子U20・U18の世界選手権は、フル代表の世界選手権と比べると、トップディビジョンのチーム数が6国も減っており、より競争が激しいと言えます。
その影響もあり、男子U20日本代表は1995年に初めてU20世界選手権に参戦してから、1度もトップディビジョンでプレーしたことがありません。
2012年のリーグ再編以降は、ディビジョンⅠグループB(3部)とディビジョンⅠグループB(4部)を行き来する年が続きましたが、ここ数年はディビジョンⅠグループB(3部)でも安定して残留することができており、2024年にはディビジョンⅠグループA(2部)でプレーすることもできました。
ユース・ジュニア世代からも積極的に海外挑戦する選手が増え、成長に拍車をかけていると言えます。
次の目標は、ディビジョンⅠグループA(2部)での残留でしょう!
男子U18日本代表:直近2年連続降格で、来年は初の4部へ

2020年・2021年はコロナ禍のため不開催
U18日本代表は、2019年まではディビジョンⅠグループB(3部)で安定し、2019年に悲願のディビジョンⅠグループA(2部)への昇格を果たしましたが、2024年・2025年と2年連続での降格。
来年(2026年)には2011年リーグ再編以降初のディビジョンⅡグループA(4部)での戦いとなり、最速での昇格が強く望まれます。
女子U18日本代表:1部と2部を昇格・降格の繰り返し

2021年はコロナ禍のため不開催。
女子U18日本代表は、2014年に1度だけトップディビジョン(1部)に残留を果たしましたが、それ以降はトップディビジョン(1部)とディビジョンⅠグループA(2部)の間で昇格・降格を繰り返しています。
女子U18世界選手権は、女子フル代表世界選手権よりもトップディビジョンのチーム数が2国少なく、競争は激しいですが、来年(2026年)にはまた昇格し、再来年(2027年)にはトップディビジョン残留を果たしてほしい‼️
アイスホッケー世界選手権の視聴方法
基本的にはIIHF(世界アイスホッケー連盟)の公式YouTubeにて全試合ライブ放送され、アーカイブ・ハイライト映像も無料で視聴可能です。
余談1:各国がフルメンバーを揃えられない

ここでは一つだけ世界選手権の残念なところを…。
世界選手権は毎年行われる唯一の国際大会であり、各国が世界一を目指して戦う場ではありますが、実際には、各国の男子代表チームは、フルメンバーで戦えないことが多いです。
というのも、このアイスホッケー世界選手権は、北米のプロリーグ(NHL・AHL・ECHL・それ以下のリーグ全て)のプレーオフの時期と被っており、それらのリーグのプレーオフにてプレーする選手たちは世界選手権に出場できません。
(北米以外、つまりヨーロッパのプロリーグやアジアリーグは世界選手権前にプレーオフを終えます。)
特にカナダやアメリカは、数百人の現役NHL選手たちを擁し、全ての代表選手たちをNHL選手で構成するポテンシャルがあります。
しかし、彼らの多くはNHLプレーオフに参戦していたり、シーズン終わりに体を休めるためにオフに入ることが多いです。
代わりに2部AHLの選手や、プロリーグより早くシーズンが終わる大学リーグNCAAの優秀な選手、ジュニアリーグで活躍する選手が穴埋めとして召集されますが、アイスホッケーファンたちが期待するアベンジャーズのような最強戦士たちの集まりという感じでは全くないです。
世界選手権は、形としては世界一を目指して戦う大会ではありますが、実際には世界各国がスター選手を欠いており、各国は真の実力を発揮できない状況であると言えます。
ちょっと残念ですよね…。
これはNHLに限った話ではなく、北米3部ECHLにて海外挑戦を行う選手がいる日本代表の編成にも大きく影響してきます。

昨年(2024年)の世界選手権では日本代表の絶対的エースである平野裕志朗選手が不在、今年(2025年)の世界選手権ではECHL史上初の日本人キャプテンとなった三浦優希選手が不在、そして昨年も今年も世界で最もレベルの高いカナダメジャージュニアCHLにて大活躍している磯谷建汰選手が不在と、日本代表は真の力を出すことができているとは言えません。

なんでフル代表の世界選手権は、いつも4月・5月に行われるのでしょうか。すごい勿体無いですよね。
IIHFの本部がヨーロッパにあるから、ヨーロッパの国々が有利に進められるようにしていたりするのでしょうかね…?
余談2:2022年以降はロシアとベラルーシの不在による恩恵

2022年にロシアがウクライナに侵略したことを受け、ロシア・ベラルーシは世界選手権への出場を禁止されております。
男子アイスホッケーにおいては、ロシアは世界的に見てもTop5に入る超強豪国、そしてベラルーシもずっと世界選手権トップディビジョンにてプレーし続けている、日本の格上の強豪国です。
女子アイスホッケーにおいても、ロシアはカナダ・アメリカほどではないですが、Top5に入ることの多い強豪国でした。(ベラルーシは女子チームを持っていない模様)
2022年にこの2国がいなくなったことによって、他の国々が自動的にステップアップすることができており、幸か不幸か、日本もその恩恵を受けている国と言えるでしょう。
現実的に、男子の日本代表がこの2国に対して安定的に勝利できるかというと難しいところ。
彼らが世界選手権に復帰した暁には、特に男子世界選手権は競争が激化する可能性が高いです。
まとめ
- 国際アイスホッケー連盟(IIHF)が毎年開催する国際大会
- 5つのカテゴリーがある
- 男子
- 男子U20
- 男子U18
- 女子
- 女子U18
- それぞれのカテゴリーにて、レベル別にディビジョン分けされている
- 毎年、自動昇格・降格が発生し、ディビジョン内でのレベルの均衡が保たれている
- 2025年の世界選手権における日本代表は以下のディビジョンでプレー
- 男子:ディビジョンⅠグループA(2部)
- 女子:トップディビジョン(1部)
- 男子U20:ディビジョンⅠグループB(3部)(残留が確定)
- 男子U18:ディビジョンⅠグループB(3部)(降格が確定)
- 女子U18:トップディビジョン(1部)(降格が確定)
- 国際アイスホッケー連盟(IIHF)の公式YouTubeチャンネルにて、ライブ配信・アーカイブ配信・ハイライト配信あり
- 北米プロリーグのプレーオフと同時期に開催されるため、各国はフルメンバーを揃えられない
- 2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、アイスホッケー強豪国であるロシア・ベラルーシは世界選手権出場停止処分中。処分が明けたら競争が激化する可能性大。
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