アイスホッケーは、アメフトやラグビーのように
ある決められた範囲でのボディコンタクトが認められており
選手同士の非常に激しいぶつかり合いが特徴の一つです。
しかし
体を張ってゴールを死守するために、重厚な防具に身を包んでいて
素早い動きが難しいゴールキーパーに対して
ボディコンタクトを行うことや
ゴールキーパーのプレーに対する妨害行為は厳重に禁じられております。
今回はそのゴールキーパー自身と、ゴールキーパーによるパフォーマンスを守るために規定されたルール
ゴールキーパーへのインターフェアランス(Interference on the Goalkeeper)
について解説していきます。
※普段はアイスホッケーにおけるゴールキーパーのことを「ゴーリー(Goalie)」と呼ぶことが主流ですが、ここでは国際アイスホッケー連盟のルールブックに則って「ゴールキーパー(Goalkeeper)」と呼ぶこととします。
とにかくゴールキーパーは守られている
ゴールキーパーへのインターフィアランス(Interference on the Goalkeeper)を一言で…
「ゴールキーパーに故意に接触するのは危険かつズルいので反則!」
「ゴールクリース内では、ゴールキーパーの動きを邪魔してはいけない」
ゴールキーパーへの接触は危険
国際アイスホッケー連盟(IIHF)のルールブックでは
ゴールキーパーは、とにかく守られるべきプレイヤーであることが明記されています。
A Goalkeeper is not “fair game” just because they are outside the Goal Crease area. The appropriate penalty should be assessed in every case where an opposing Player makes “unnecessary contact” with a Goalkeeper.
(日本語訳:ゴールキーパーは、ゴールクリースエリアの外にいるからといって「フェアゲーム」ではない。相手側プレーヤーがゴールキーパーに不必要な接触をした場合には全て適切なペナルティを科すべきである)
RULE 69.4. 『CONTACT OUTSIDE THE GOAL CREASE』, IIHF OFFICIAL RULE BOOK 2023/24, p-112
先述の通り、
アイスホッケーのゴールキーパーは重厚な防具に身を包まれているため
咄嗟の判断で避けることが難しく
また、その防具は放たれた小さなパックを受け止めることは出来ても
選手のヒットによる非常に強い衝撃があれば
依然として大きな怪我に繋がりやすいのです。
ゴールを守っているゴールキーパーを阻害するために
攻めているチームがゴールキーパーにヒットしているシーンを想像してみてください。
地獄絵図です。
このようなことを防ぐために
ゴールクリース内か否かに関わらず
ゴールキーパーへの意図的な接触は反則行為として規定されております
これを行った選手に対して
ゴールキーパーへのインターフェアランス(Interference on the Goalkeeper)が適用され、
基本的には最も軽いペナルティであるマイナーペナルティが科されますが
審判がそれだけでは不十分であると判断した場合は
もう1段階重いペナルティであるメジャーペナルティが科されます。
ゴールクリース内でゴールキーパーの動きを邪魔してはならない
このルールは
ゴールキーパーの安全を守るだけでなく
ゴールクリース内でのゴールを守るプレーを最大限保障しています。
The overriding rationale of this rule is that a Goalkeeper should have the ability to move freely within their Goal Crease without being hindered by the actions of an attacking Player.
(日本語訳:このルールの最も重要な根拠は 、ゴールキーパーは攻撃側プレーヤーの行為に妨げられることなくゴールクリース内で自由に動くことができるべきであるということである。)
RULE 69.1. 『INTERFERENCE ON THE GOALKEEPER』, IIHF OFFICIAL RULE BOOK 2023/24, p-111
ゴールキーパーに意図的に接触しにいかずとも
攻撃側の選手がゴールクリース内にいることによって
ゴールキーパーのゴールを守る能力が妨害された場合は
ゴールキーパーへのインターフェアランス(Interference on the Goalkeeper)が適用されます。
例えば
ゴールキーパーがゴールクリース内でゴールを守るためのプレーをした際に
ゴールクリース内にいる攻撃側の選手と接触した場合
もしくは
ゴールキーパーがゴールクリース内にいる攻撃側の選手のせいで
自由に動き回れない場合
例えそのプレーでゴールが入ったとしても
原則、得点は認められません。
また、攻撃側の選手がゴールクリース内にいるだけでゴーリーの邪魔になっていなくとも
攻撃側の選手が、ゴールクリースに入ってから直ちに出ていくことがない場合
審判は笛を吹いて、試合を一時中断することができます。
ゴーリーへの接触が全てダメ、というわけではない
上記で解説したように
ゴールキーパーはルール上、かなり守られているプレイヤーではありますが
ゴールキーパーへの接触が全て反則となっているわけではありません。
もちろん、故意にゴールキーパーにヒットした場合は
ペナルティが科されますが
非常に判断が難しいのが、故意でなかった場合
すなわち、偶発的な接触であった場合です。
選手がスケートしてくるところに
ゴールキーパー自らが突っ込んできて避けきれなかったり
相手選手と接触したはずみで相手のゴールキーパーと接触してしまう
みたいなことも起こりうるわけです。
では、このルールでは
どのような線引きで反則かそうでないかを規定しているのでしょうか。
「避ける努力が最大限されているかどうか」が非常に重要
結論から言うと
偶発的なゴールキーパーとの接触においては
「避ける努力が最大限されているかどうか」
が重要となります。
避ける努力が最大限されているのであれば
ペナルティが科されることもないですし
その結果生じたゴールも撤回されることはありません。
例えば先ほどの例で言えば
攻撃側の選手がパックを取りに行った際に
ゴールキーパー自らがゴールクリースからその選手の前に飛び出て
その選手とゴールキーパーと接触してしまった場合
これが偶発的な接触であり
選手は接触を避ける努力を行なったとみなされた場合は
ゴールキーパーへのインターフェアランス(Interference on the Goalkeeper)は適用されず
その選手にペナルティが科されることはないですし、
そのプレーの流れで生じた得点も認められます。
他にも
守備側の選手が攻撃側の選手に意図的に接触し
攻撃側の選手がゴールキーパーの方に押されることで接触してしまう
ということがよく生じますが
押された攻撃側の選手が
最大限避ける努力をしていた場合
例えゴールキーパーに接触してしまったとしても
ゴールキーパーへのインターフェアランス(Interference on the Goalkeeper)は適用されず
ペナルティが生じることはありませんし、
その結果生じた得点も撤回されません。
つまりは、
守備側の選手が
自分たちのゴールキーパーを邪魔するようなプレーをしたのが悪いやん?
という判定となるわけです。
この判断が難しくビデオ判定になることも
審判にとってはこの
「故意であったかそうでないか(偶発的かどうか)」
「避けるための最大限の努力がなされているか」
の判断が非常に難しくなります。
一つのプレーをとっても
非常に多くの議論がなされ
大きな論争を生むことも少なくありません。
この審判の判断によって一つのゴールが取り消されるか取り消されないかの大きな違いを生み
チームの勢いにも大きく影響しますので、
皆、必死に抗議するわけです。
このような状況に至った場合にはよくビデオ判定が行われます。(以下の動画参照)
まとめ
このことを理解しておくだけで、よりアイスホッケー観戦を楽しめるのではないでしょうか!
こちらの記事では
このゴールキーパーへのインターフェアランス、またはゴールクリースに関する
誤った知識について解説していますので
是非こちらも併せてご覧ください。
以上になります。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!