アイスホッケーの本場の国アメリカでは、世界トップレベルのアイスホッケー選手を育成するための、アメリカならではのジュニアトップ選手プログラムがあることをご存知でしょうか?
今回は、将来のアメリカ代表選手を育成することを目的に作られた USNTDP(USA Hockey National Team Development Program)について解説いたします。
USNTDP(USA Hockey National Team Development Program)とは

USNTDP(USA Hockey National Team Development Program)は、1996年に発足したUSA Hockey(アメリカアイスホッケー連盟)が主導するエリート育成プログラムです。
将来のアメリカ男子アイスホッケー代表選手を育成することを目的とし、毎年全米から選ばれたトップ選手約20名が2年間、ミシガン州プリマス(Plymouth, Michigan)にある専用施設USA Hockey Arenaでシーズンを通してアメリカ最高峰の育成トレーニングを受けるシステムです。
卒業生の多くはアメリカの名門大学(NCAA)へ進学し、後に世界最高峰のNHLで活躍します。
▼NCAAについての解説記事はこちら
卒業生の実績がエグい

このUSNTDP、将来のアメリカ男子アイスホッケー代表選手を育成するためにアメリカアイスホッケー連盟がめちゃめちゃ力を入れているプログラムなだけあって、卒業生の実績がエグいです。
100名以上のUSNTDP卒業生が現在のNHLで活躍しており、2025年2月に行われた世界最強を決める大会である NHL 4 Nations Face-off に参加したアメリカ代表選手23名のうち、15名はこのUSNTDP出身です。
例えば、NHL超スター選手のAuston Matthews(Tronto Maple Leafs 34番 FW)や、
Quinn Hughes(Vancouver Canucks 43番 DF)・Jack Hughes(New Jersey Devils 86番 FW)・Luke Hughes(New Jersey Devils 43番 DF)の3兄弟、
Matthew Tkachuk(Florida Panthers 19番 FW)・Brady Tkachuk(Ottawa Senators 7番 FW)の兄弟、Patrick Kane(Detroit Red Wings 88番 FW)、など
数えればキリがないほど、NHLで活躍する素晴らしい選手たちを輩出しています。
USNTDPの選手選考

USNTDPの選手選考は、以下の手順で行われます。
- 長期的なスカウティング
選手たちは、USNTDPへの参加前の2年間にわたり、全国的に追跡・評価されます。 - 評価キャンプへの招待
このスカウティングの集大成として、毎年3月にミシガン州のUSA Hockey Arenaにて、数日間のNTDP評価キャンプ(NTDP Evalutation Camp)が招待制で開催されます。 - 最終選考とチーム編成
評価キャンプでは、選手たちが2つのチームに分かれ、オンアイスの練習、オフアイスのトレーニング、試合を行います。この過程を通じて、翌シーズンのU17チームのメンバーが選出されます。
2025年3月に行われたNTDP評価キャンプでは、
FW26人・DF16人・GK4人、合計46人の選手がアメリカ全土から招集され、
FW13人・DF8人・GK2人、合計23人の選手が選出されました。
このように、USNTDPでは綿密なスカウティングと厳格な評価プロセスを経て、全米から最も有望な若手アイスホッケー選手が選ばれています。

アメリカはアイスホッケー大国。
ユース1世代の競技人口だけでも約3万人と推定されています(GrokのDeepSearch調べ)。
その中から23人を選ぶとなると、倍率1300倍!?
そりゃすごい選手が集まるわけだ…。
対戦相手は強豪ばかり
U17(17歳以下)とU18(18歳以下)の2つのチームで構成されており、1年目の選手はU17チームで、2年目の選手はU18チームでプレーします。
シーズンを通してU17・U18チームの両方が、年上かつ非常にレベルの高い対戦相手との試合を何度も行うことで、著しくレベルアップしていきます。
国際大会へ、アメリカ代表として出場

また、IIHF(世界アイスホッケー連盟)主催のU17カテゴリ・U18カテゴリの世界大会があるときは、このUSNTDPがアメリカ代表チームとして出場します。
この際、U17世界大会に出場する際は U17 USNTDP がそのまま出場します。
U18世界大会には U18 USNTDP の選手だけでなく、U17で素晴らしい成績を残した選手も出場します。
(なお、このUSNTDPプログラムの選手でなくとも、他に著しい結果を出している選手がいれば、その選手がアメリカ代表に加わることもあるようです。)
USHLへ参戦

USNTDPは1つのチームとして、アメリカTier1ジュニアアイスホッケーリーグのUSHL(United States Hockey League)に参戦しております。
USHLのレギュラーシーズンでは1チーム62試合戦うのですが、
U18チームはそのうち25試合を、U17チームはそのうち37試合をが戦います。
その勝敗の合計でチームの成績が決まります。
U18 USNTDPはUSHLプレーオフと同じタイミングで開催されているU18世界大会に参加するため、U17チームがUSHLプレーオフに出場するようです。
(U17チームは、シーズン序盤はNAHL(Tier2ジュニアリーグ)のチームとも数回試合を行うようです)
基本的にジュニアリーグでプレーする選手の年齢は16歳から20歳。
しかもUSHLは、アメリカのトップ選手たちが集まるリーグです。
その中で17歳以下のチーム・18歳以下のチームが試合するわけで、そりゃ成長しますよね!

やはりどの試合もそう簡単には勝てないみたい。
過去15シーズンほどUSHLで戦っていますが、USNTDPは優勝カップを手にしたことはありません。
U18チームは、NCAA大学との試合がメイン

U18チームは NCAAディビジョンⅠ に所属する大学や、NCAAディビジョンⅢ(実質2部)の強豪ホッケーチームと定期的に対戦しています。
これにより、年上で体格・経験共に優れた相手との真剣勝負を経験でき、その若い世代の有望な選手のさらなる成長が促されます。
トレードや解雇の心配は要らない

USNTDPが参戦するアメリカTier1ジュニアアイスホッケーリーグのUSHLではシーズン中、チーム間で選手がトレードされたり、調子の悪い選手がクビになって下部リーグ(Tier2・3リーグ)に送られることがよくあります。
しかし、USNTDPの選手たちにその心配は要りません。
USNTDPの選手たちは、シーズン中には絶対にトレードされず、クビになって下部リーグに送られることもありません。
しかし、1年目から2年目に移る際に、USNTDPを自主的に去る選手や、2年目の育成プログラムに招待されない選手はいるみたいです。数は多くないみたいですが。
(あとシーズン途中で、何試合かだけ試合にお試し参加する選手も多少いるみたい。)
世界トップレベルの指導環境

USNTDPでは、NHL経験者や、AHL・NCAAでの豊富なコーチング経験を含む一流コーチ陣が徹底指導します。
ホッケーの個人スキルに加え、プレー判断力(ホッケーIQ)、戦術理解、個別のスキル向上などあらゆる側面から選手のポテンシャルを最大限に引き出しています。
加えて、オフアイスでのトレーニングを指導するトレーナーや、選手の体のケアを行うメディカルスタッフ、用具のケアを行うイクイップメントマネージャーについても、豊富な知識と経験を有する専門スタッフが雇われており、将来のアメリカ代表を背負う選手を育成するに相応しい環境だと言えるでしょう。
学業もチームがサポート
柔軟な学業プログラムで、飛び級を実現

USNTDPのすごいところは、そのアイスホッケー環境だけではありません。
通常の高校とは異なり、ミシガン国際予備校(Michigan International Prep School)という地域の公立オンライン高校と連携し、選手が自分のペースで勉強を進められるようサポートしています。
USNTDPの選手は、卒業した後はNCAA所属の一流大学へ進学することが多く、しっかりと学業に打ち込むことも必要ですが、そこもUSNTDPがサポートしています。
加えて、学業の柔軟性も選手たちを一流の選手へと成長させる大きな秘訣です。

これにより、ホッケーのスケジュールに合わせて高校のカリキュラムを短縮し、17歳で卒業することが可能になります。

しかも、アメリカでは公立高校は無料!
(私立高校は有料)
【具体例】飛び級で大学へ進学したJack EichelやQuinn Hughes
USNTDPに集められた世代のエリート選手たちでも、ほとんどは通常通り18歳で高校を卒業し、次のステップであるNCAAの大学へ進学することが多いです。
しかしその中でもトップ中のトップの選手は、さらなる高みを目指して、早期に高校教育を修了し、飛び級でNCAAの大学へ進学します。
Jack Eichel(Vegas Golden Knights FW 9番)

現在、NHL・Vegas Golden KnightsのエースFWとして大活躍するスター選手のJack Eichelは、そのように飛び級できる制度を用いて最速で成長した選手の1人です。
1996年10月生まれのEichelは、2012-13シーズン(16歳になるシーズン)・2013-14シーズン(17歳になるシーズン)の2シーズンをUSNTDPで過ごし、その間でミシガン国際予備校にて高校卒業資格を取得。

17歳ながらNCAAディビジョンⅠ所属のボストン大学(Boston University)に進学し、最年少ながらNCAAトップスコアラーになります。
その後に2015年NHLドラフトで1巡目2位指名を受けて、今のような地位を築いています。
(もちろん、アメリカ代表としてプレーしています。)
Quinn Hughes(Vancouver Canucks DF 43番)

現在、NHL・Vancouver Canucksでキャプテンとしてチームを引っ張るQuinn Hughesも最速でNHLまでその1人です。
1999年10月生まれのHughesは、2015-16シーズン(16歳になるシーズン)・2016-17シーズン(17歳になるシーズン)の2シーズンをUSNTDPで過ごし、その間でミシガン国際予備校にて高校卒業資格を取得。

17歳ながらNCAAディビジョンⅠ所属のミシガン大学(University of Michigan)に進学し、チームをFrozen Four(全米ベスト4)に導き、新人ベスト6にも選出。
その後、2018年NHLドラフトにてVancouver Canucksから1巡目7位指名を受け、今や世界を代表するDFへと大成長しました。
(もちろん彼もアメリカ代表選手です。)
▼NCAA出身のNHLスター選手についてまとめた記事はこちら
このように、USNTDPはホッケーの才能を磨きつつ、学業を加速させる仕組みを提供し、トップ選手が早く大学でプレーできる道を開いています。
選手たちを支えるホストファミリー

アメリカ全土から集められた選手たちは、そのUSNTDPの拠点があるミシガン州プリモス(Plymouth, Michigan)に住むホストファミリーの家に住み、車を運転しない選手はホストファミリーに送迎してもらっています。
(アメリカ・ミシガン州では、車を運転できるのは最速で14歳(細かい規定あり))
もちろん無報酬ではありません。
具体的な内容は明かされておりませんが、USNTDPからホストファミリーに対して、選手の育成に必要な費用や、一定額の経済的支援は支払われているようです。
アメリカのトップ選手たちは、このホストファミリーによる厚い支援を受けながら、アイスホッケーの技術向上と学業の両立に励んでいます。
まとめ
- USNTDPはアメリカ連盟主導の16〜18歳ジュニア選手育成プログラム
- 目的は 将来のアメリカ代表選手を育成
- U17・U18の2チームで構成
- ミシガン州プリマスのUSA Hockey Arenaが拠点
- アメリカTier1ジュニアリーグUSHL、NCAA大学、他国ジュニア代表と試合
- シーズン中のトレードや解雇がなく、安定してプレーに打ち込める
- ホストファミリーと住む
- NCAA大学に進学するために、オンライン学習。また、飛び級も可能
こんなトップ選手を全力育成するシステムがあるの、本当に素晴らしい!
日本アイスホッケー界でも真似したいですね!
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