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下の2つのペナルティについて解説した記事を読んでおくと
より理解ができると思いますので是非!
乱闘(Fighting)
(画像引用:https://www.nytimes.com/2020/08/13/sports/hockey/nhl-qualifying-round-playoffs.html)
アイスホッケーは一定のボディコンタクトが許されているスポーツであり
そして、特に北米ではアイスホッケー文化の1つとして乱闘が行われているスポーツでもあるため
選手同士の争いが発展し
度々乱闘が起こります。
特に北米のプロリーグでは
乱闘はアイスホッケーに欠かせないエンターテイメントの1つであるという見方が主流で
乱闘に対する罰則が国際アイスホッケー連盟におけるルールより緩いことが多く
乱闘は至る所で行われています。
アイスホッケーのことを何も知らない方でも
乱闘がヤバいスポーツだってことだけ知ってる方が多いですよね😂
ここでは、その乱闘におけるルールや、乱闘に対して適応されるペナルティについて詳しく解説いたします。
アイスホッケーにおける「乱闘」の定義
IIHFルールブックにおける「乱闘」についての定義は以下のように記されています。
A “fight” shall be deemed to have occurred when at least one (1) Player punches or attempts to punch an opponent repeatedly or when two (2) Players wrestle in such a manner as to make it difficult for the Linespersons to intervene and separate the combatants.
(意訳)「乱闘」とは、少なくとも1人の選手が繰り返し相手選手を殴ろうとしている時、または2人の選手が、審判が引き離すのが困難なほど取っ組み合いを始めた時のこととする。
IIHF OFFICIAL RULE BOOK 2021/2022, IIHF, p-101
審判が止めに入ったにも関わらず
選手同士がペナルティを覚悟して乱闘を始めようとしたら
「あぁこいつら止めらんないわ」
と審判も止めに入ることを諦めるのです。
アイスホッケー界では
この取っ組み合いを始めたプレイヤーたちが
思う存分相手を殴り合える状態になって始めて「乱闘」と呼びます。
単に、1人の選手が相手選手を1度殴るだけで
取っ組み合いに発展しなかった場合
ラッフィングという
別の反則が科されます。
この定義のもと、詳細を解説いたします。
「乱闘」の中にいくつか反則の種類がある
「乱闘」といっても、その中で反則行為が細分化されており
それぞれの細かい行為に対してのペナルティが用意されています。
以下、上4つが特に覚えておくべき重要な反則行為です。
- 🟥 乱闘
- 🟥 煽って乱闘を引き起こす(インスティゲイター)
- 🟥 転んでいる相手に殴りかかる(アグレッサー)
- 🟥 他のやつが手を出す(第3者介入)
- 危険なパンチ
- 自発的にヘルメット・ユニフォームを脱ぐ
- 乱闘の邪魔な位置にいる
乱闘(Fighting)
まずは最も基礎的な反則行為から。
先述のように
審判が止めに入っているにも関わらず、執拗に乱闘を続けた選手たちには
以下の2つの重大なペナルティの両方が科され、
例外なく試合退場処分となります。
- 「ファイティング(Fighting)」してのメジャーペナルティ(Major Penalty)
- 退場処分としてのゲームミスコンダクトペナルティ(Game Misconduct Penalty)
加えて、ゲームミスコンダクトペナルティは、アイスホッケーにおいて最も重いペナルティであり
各リーグの適切な委員会が1~数試合の出場停止処分を追加で科すことが多いです。
煽って乱闘を引き起こした人「インスティゲイター・イニシエイター(Instigator / Initiator)」
次に、乱闘した2人の選手の中でも
煽って乱闘を引き起こしたとされる選手には
追加で重いペナルティが科されます。
インスティゲイト(Instigate)とは、日本語で「扇動する」「煽る」という意味です。
イニシエイト(Initiate)とは、日本語で「始める」「起こす」という意味です。
IIHFルールブックでは、以下のことをした選手がこれに該当するとしています。
- distance traveled(わざわざ遠いところから近くに来て乱闘する)
- gloves off first(最初にグローブを脱いで仕掛ける)
- first punch thrown(最初にパンチを食らわせる)
- menacing attitude or posture(態度や姿勢で威嚇する)
- verbal instigation or threats(言葉で煽る・脅す)
- conduct in retaliation to a prior game incident(前に行われた試合についての報復行為)
- obvious retribution for a previous incident in the game(その試合での前に起こった出来事への明らかな報復行為)
このインスティゲイター・イニシエイター(Instigator / Initiator)に当てはまり
乱闘を引き起こしたとされる選手には、上記の「ファイティング(Fighting)」の反則に加えて
マイナーペナルティ(Minor Penalty)が科されます。
すなわち少なくとも
(インスティゲイター)マイナーペナルティ:2分
+(ファイティング)メジャーペナルティ:5分
+(ファイティング)ゲームミスコンダクトペナルティ:試合退場
が科されます。
冷静になると
ほんと凄いスポーツだな…(笑)
相手が転んでも殴るのを辞めない「アグレッサー(Aggressor)」
乱闘は片方が転んだら終わりです。
片方が転んだり膝をついたりしたら、審判が即座に止めに入り、両選手は乱闘を終えなければなりません。
アグレッサー(Aggressor)とは
乱闘において相手選手が転んで無防備な体勢になった時や
相手選手が乱闘を続ける素振りを見せなくなっても
相手に殴りかかるのを辞めない選手のことを言います。
(画像引用:https://ottawasun.com/sports/hockey/nhl/ottawa-senators/tkachuk-wont-be-suspended-for-fight)
このアグレッサーに当てはまっているとみなされた選手には
上記の「ファイティング(Fighting)」の反則に加えて
マイナーペナルティが科されます。
アグレッサーに当てはまると
(アグレッサー)マイナーペナルティ:2分
+(ファイティング)メジャーペナルティ:5分
+(ファイティング)ゲームミスコンダクトペナルティ:試合退場
もし、インスティゲイター・イニシエイター(Instigator / Initiator)とアグレッサーの
どちらにも当てはまるとされる選手には
(インスティゲイター)マイナーペナルティ:2分
(アグレッサー)マイナーペナルティ:2分
+(ファイティング)メジャーペナルティ:5分
+(ファイティング)ゲームミスコンダクトペナルティ:試合退場
が科されます。
ヤバい…どんどん増えていくぞ…
第3者介入(Third Player In)
乱闘はゼッタイに1on1のタイマン
ということです。
既に起きている乱闘に対して
他の選手が手を出して乱闘に加わった場合
その選手には退場処分としてゲームミスコンダクトペナルティ(Game Misconduct Penalty)が科されます。
このようなペナルティはありますが
よく第3者が突入して殴りかかり
それに対して相手チームの第3者も殴りかかり
2組目の乱闘が起こる、なんてことがよくあります😂
危険なパンチ(Dangerous Puncher)
手首より下に何かを巻き付けて相手選手を殴りかかることで相手選手を切りつけたり、相手を怪我させたりした選手、
または乱闘を続ける素振りのない相手選手が負傷する可能性のある不意打ちのパンチを食らわした選手には
ゲームミスコンダクトペナルティ(つまり自動でメジャーペナルティも追加)が科されます。
特にルールブックには明記されていませんが
乱闘を始める際、基本的には皆グローブを脱いで殴り合います。
これは「グローブが相手を怪我させる危険性を高めるから」と書いている人も多くいますが
グローブでも素手でもどちらにせよ相手怪我させるよな…?
乱闘にて攻撃された人・乱闘を続ける素振りのない人(Defender / Unwilling Combatant)
相手選手から身を守るという理由のために
数発のパンチで応戦し
相手に自分から殴りかかることがない選手は
乱闘を続ける素振りがない選手とみなされます。
自己防衛のためだとしても相手選手を殴っていることには変わりがないですが
「反撃している」とみなされない限り
その選手に科される反則は
「ラッフィング」として科されるマイナーペナルティか
ファイティングとして科されるうちのメジャーペナルティのみ
(退場処分のゲームミスコンダクトペナルティ無し)
のどちらかとなります。
やられても殴り返しちゃいけない、ということね。
乱闘時にヘルメットを自発的に脱ぐ
(画像引用:https://scoutingtherefs.com/2021/12/32719/devils-johnsson-penalized-for-removing-helmet/)
乱闘時にヘルメットを自発的に脱いだ選手には
マイナーペナルティが追加で科されます。
乱闘中に偶発的にヘルメットが脱げてしまった場合には
追加のペナルティは科されません。
乱闘時にユニフォームを自発的に脱ぐ
乱闘時にユニフォームを自発的に脱いだ選手には
「アンスポーツマンライクコンダクト(Unsportsmanlike Conduct)」としてのマイナーペナルティと
退場処分としてのゲームミスコンダクトペナルティが追加で科されます。
もしある選手が乱闘のためにユニフォームを脱いだけど乱闘が行わなかった。という場合にはその選手に
「アンスポーツマンライクコンダクト(Unsportsmanlike Conduct)」としてのマイナーペナルティと
ミスコンダクトペナルティ(ゲームミスコンダクトペナルティではなく)
が追加で科されます。
周りの選手は乱闘から離れる(Clearing the Area of the Fight)
乱闘が生じた際、その周りの選手たちはすぐにそれぞれのチームのベンチ前に帰り
乱闘をしている選手の周りから離れなければなりません。
チームのベンチ前で乱闘が生じた場合は
それぞれのチームの自陣で待機しなければなりません。
また、ゴーリーはクリーズ(ゴール前)に待機しなければならず
クリーズ周辺で乱闘が行われた場合には
審判の指示に従い場所を移動しなければなりません。
これを守らない選手がいて、乱闘に関与した場合、それ相応のペナルティが科されることがあります。
これは正直初めて知った。
あまり守られていない気がする😂
おまけ:乱闘に否定的な国際アイスホッケー連盟
国際アイスホッケー連盟のルールブック内の
乱闘(Fighting)の項目の書き出しは以下の通りです。
”Fighting” is not part of international ice hockey’s DNA.
(「乱闘」は国際アイスホッケーのDNAには含まれていない)
『RULE 46 FIGHTING』IIHF RULE BOOK 2023/24, p-84
アイスホッケーにおける乱闘は、その文化の一つとなってはいますが
やはり危険度が高く、氷上でパックを相手ゴールに入れた回数を競うアイスホッケーという競技自体から趣旨が脱線していることも考えると
やはり乱闘は極力避けてもらいたい事象なのでしょう。
まとめ
以上のことだけでも覚えて、アイスホッケーの観戦を楽しみましょう!
(日本だと、例えプロでも乱闘は稀にしか生じませんが😂)
以下の記事も是非ご覧ください!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!