【アメリカ挑戦プロアイスホッケー選手のブログ】足りないのは、「テクニック」ではなく「スキル」

       

▼前回のブログはこちら

2025年2月14(金)〜16日(日) vs Athens Rock Lobster

先週に引き続き、今週も15日間限定怪我人リスト(15 days Injured Reserve list)に入っていたため、試合には出場しておりませんでした。

シーズンが始まって初めて金・土・日の3試合。

相手はリーグ首位のチーム。僕らは30連敗中の最下位チーム。
結果は下馬評通りに3連敗でした。

もちろん修正点は多くあるものの、3試合全て試合終了のホイッスルがなるまでどうなるかわからないハラハラした展開で、かなりの好試合でした。

何より、僕が出ていないFW陣がかなり機能していました。
僕の代わりに出ていたFW達がみんなポイントを取って大活躍。

今いるチームメイトは、本当にいい奴らばかりで、今シーズンで一番良い信頼関係を築けております。
そんな彼らが躍動して、首位のチームを苦しめる姿には仲間である僕も熱狂させられ、彼らを誇らしく思いますが、やはりそれと同時に、それと同量の悔しさが押し寄せます。

そして、ファンからも
「なぜここにいるんだ?」
「いつお前のプレーを見れるんだ。」
「頑張れ、応援しているぞ。」

と色々と声をかけてもらったり、

「あなたのために作ったんだ!」と嬉々としてお手製の名前入りブレスレットをプレゼントしてくれた子どもたちに、事情を話して少し悲しそうな表情をさせてしまったり。

ファンの子から頂いたブレスレット。試合に出ていなくてごめんすぎる(泣)

悔しい。悔しすぎる。

自分に足りないのは「テクニック」ではなく「スキル」

観客席にいる自分には何が足りないのか。
氷上でプレーしている彼らには何が足りているのか。
なぜ、相手チームは首位チームをキープし続けられているのか。
いろんな考えを張り巡らせながら試合を観戦しました。

改めて気づいたのは、これは僕の「テクニック」ではなく「スキル」の問題である、ということです。

さて、SNSを長く利用しているアイスホッケーファンはお気付きでしょう。
大尊敬する海外挑戦の先輩、日本代表の三浦優希選手がNoteに記していたことじゃないか!!!!!

まだ読んでいない方はとりあえず早く読んでください。
『143. 「テクニック」と「スキル」の違い』- 三浦優希 Yuki Miura

正直、チームメイトやこのリーグの選手を見ても、僕より速くスケートができる人はあまり多くありません。
「遅い!よくこのスケーティングでこのレベルで戦えているな!」と思ってしまうような選手もいます。

ハンドリングも同じです。
「別に全然上手くないな…」と思ってしまう選手も多くいます。

しかし、彼らは大抵僕より良い結果を残していたりします。
(もちろん、テクニックの面において僕より優れている選手ももちろん多くいます)

彼らと僕との違いは、三浦優希選手が記す通り「試合における素早いプレッシャーに対する適応力」です。
テクニックが僕より劣る彼らも、試合の相手選手からプレッシャーがある状況下において、僕より上手く対応して最良なリターンを得る確率が高いのです。

この北米では、リンクのサイズが非常に小さく、スペースが狭いため、自分がパックを持つ時間は短くなります。

そして、相手選手にもいろんなスタンスの選手がいます。

  • 相手に強烈なヒットを喰らわせてやろうとアグレッシブにプレーしている選手
  • 相手をヒットを怖がって怯んでいる隙を狙って逆にパックだけ奪ってやろう、という選手
  • 基本的に引いて相手選手の動きに後出しジャンケンで対応しようというパッシブな選手

これらのいろんな選択肢をとってプレーしてくる選手に対して、各状況下における最善のプレーを一瞬の判断で行うことに僕は酷く苦労していると気づきました。

例えば…

もんじ
もんじ

相手が物凄い勢いで僕をぶっ飛ばしにくるから、とりあえずスピードを落として、時間を作ってパックを斜め前にパスしようか…。

__________っておい、相手めちゃ下がってんじゃねぇか。
スピード乗ったままでよかったやん!!(パスカットされる)

や、

もんじ
もんじ

意外と相手は引き気味でしょ。
ここは余裕を持って落ち着いてスピードに乗って…

_________________っておい相手目の前にいるやんけ
うわ!やばい!!(吹き飛ばされる)

みたいなことが、日本でプレーしていた時とは比べ物にならないほどあります。

かといってミスを避け、リスクを取らずにとにかく安定な判断をすることを心がけると、相手選手のいる位置に関わらずパックを前に放り投げたり、とにかく相手GKにシュートを集めるような、あまり大きなリターンを得られないようなことを選択肢として頻繁に採用することになりますが、

北米の上手い選手は、十分なリターンが得られると判断した状況下ではリスクを取り、針の糸を通すようなパスを行ったり、パックをよりキープして相手DFとの1on1に挑戦して、より良いチャンスを作り出したりします

もちろんミスは誰にでもありますが、

活躍している選手は、このリスクをいつ取って大きなリターンを得るか、という判断と、そのリスクを背負ったプレーを選択した時でもいかに落ち着いて普段通りプレーするか、の落ち着きが非常に長けています。

これを「スキル」や「上手さ」と呼ぶのでしょう。

スピードやハンドリングなどの、テクニックだけでいうと全然通用しそうなのに、僕が結果を出せていないのは、圧倒的にこれです。

僕は前しか見えていません!至ってポジティブです!

試合後のファンとのスケーティング交流会で撮影されたチームメイトとのツーショット

さて、かなりネガティブなことを書いているようにも見えますが、これは捉え方によってはポジティブに捉えることができます。

なぜなら、これは試合や練習を重ねることで必ず慣れることだからです。

ポケモンでLv.10からLv.20までレベルアップするために必要な経験値が、Lv.90からLv.100までレベルアップするために必要な経験値より圧倒的に少ないのは、ポケモンマスターの皆さんであればご存知かと思います。

僕はまだ北米で20試合程度しか試合に出場しておりません。
試合を重ねることによる成長度合いは比較的大きなものでしょう。

実際に、リーグ初戦の時よりも今の方が圧倒的に北米のプレースタイルに慣れてきていることを実感しています。

(もちろん、その試合や練習を経験できる機会が与えられるより前に、クビになってしまうこともあり得るのが、この論説の弱点です。
ジュニア時代から北米でプレーできていればなぁ…。)

その北米の上手い選手たちの、素晴らしい状況判断からくる上手なプレーは、僕の身体能力が足りずに実現できない、なんてものでは決してないです。

問題はその状況判断ができるかどうか、であって、同じように判断して同じようにプレーすれば、実現することは可能だと考えます。

逆に、長年ホッケーをして体に染み付いてしまったスケーティングやハンドリング、その他身体能力の差が大きく現れる「テクニック」に関しては、日々の試合・練習の積み重ねでも、1週間や2週間ですぐに成長するものではないです。
僕がNHL選手のようにスケートしてハンドリングしてシュートすることは不可能に近いですからね。

その点、「テクニックが無くてスキルがある選手」よりも、「テクニックがあってスキルが無い僕」の方が間違いなくポテンシャルがあります。
(もちろんこのリーグにはテクニックもスキルも僕より上位である選手が山ほどいますし、僕はそこを目指さなければなりません)

長くなりましたが、何を言いたいか。

僕は至ってポジティブです。
伸び代しか見えていません。

自分がコントロールできることに集中し、その状況判断能力に磨きをかけて、そのテクニックをスキルに変換することを重視して練習するだけです。

次の水曜日に15day IRリストから外れます。正式に、来週末のロスター入りできるかの勝負がまた始まります。

愛すべき仲間たちとの勝負、そして自分との勝負!!

死ぬ気で頑張ります!!!!!!

タイトルとURLをコピーしました