【選手の評価指標】アイスホッケーにおける主要スタッツ(ゴールキーパー編)

球技においてスタッツ(stats)は選手を評価する基準の1つとして非常に重要な役割を果たしています。

以下の記事では、スケーターを評価するための主要なスタッツを紹介いたしました。

今回は、ゴールキーパーの主要スタッツについて解説いたします。

分類スタッツ名略称
試合系スタッツ試合出場数(Games Played)GP
プレー時間(Total on Ice)
(もしくは”Minutes Played”)
TOI, MIN, MP, TIME
完封数(Shutouts)SO
勝・敗・分
(Wins-Losses-Ties)
W-L-T, W-L-OTW-OTL,
W-L-OTL
セーブ系スタッツ被シュート数(Shots against)SA
セーブ数(Saves)SV
【重要】セーブ率
(Save Percentage)
SV%
【重要】1試合平均失点数
(Goals against average)
GAA

試合系スタッツ

試合出場数(Games Played)

画像引用:https://www.thepointhockey.com/juuse-saros-how-the-nhls-smallest-goalie-won-the-net-in-nashville-by-playing-big/

まず、最も簡単なスタッツである試合出場数(Games Played)です。
略してGPと表記されます。

アイスホッケーの試合では、ゴールキーパーの不調によって途中でゴールキーパーを交代させることもありますが、基本的に出場するゴールキーパーは1人です。

もう1人のゴールキーパーはバックアップ(Back-up)と呼ばれ、ベンチで出場の機会を待ちますが、もしそのまま先発ゴールキーパーが試合終了時まで出場し続けた場合には、この試合出場数はカウントされません。

よって、この試合出場数は、そのチーム内での信頼度を表す指標だと言えるでしょう。
出場回数が多ければ多いほど、そのゴールキーパーはコーチ陣に信頼されている証となります。

最近のアジアリーグ(日本・韓国のチームで構成されるアイスホッケープロリーグ)のチームでは、ゴールキーパーを3人擁するチームも多く、
その試合出場数が重要なスタッツの一つとなっています。

世界最高峰アイスホッケーリーグNHLの公式のスタッツ保管サイト、NHL Statsにあるデータを使って、昨シーズン(23/24シーズン)のNHLに出場したゴールキーパー合計98名を対象に、レギュラーシーズンの試合出場数のヒストグラムをざっと作ってみたらこんな感じ。

結構ばらつきがありますが、平均試合出場数は28.5回でした。

最も多く試合に出場していたのはJuuse Saros(NSH)の64回
レギュラーシーズンの試合数が82試合であることを考えると、驚異の数字です。

ちなみに、試合出場数が1回のみだったゴールキーパーは6人でした。
(一桁代の選手は、大体NHL下部のマイナーリーグAHLでプレーすることが多い選手です。)

プレー時間(Total on Ice)

何分氷上でプレーしたかを示すのがプレー時間(Total on Ice)です。
もう一つの英語での呼び名として”Minutes Played”と呼ばれることもあります。
略してTOI(もしくはMINやMP、TIME)と表記されます。
(TOIは、スケーターのスタッツとしても紹介しましたが、同じです)

試合出場数と同じく、どれほどチームが信頼され、プレーする時間が与えられたかを示します。

試合の途中で交代要因のゴールキーパーと交代したり、延長戦に突入した場合にもその延長戦分の時間がカウントに含まれたりするので、
必ずしもプレー時間(Games Played)×60分(アイスホッケーにおける1試合の通常試合時間)とはならないことに注意しましょう。

また、これ自体は選手の評価に直接強く影響することはないものの、後述する重要な指標である1試合平均失点数(Goals against Average)を計算するために使われます。

完封数(Shutouts)

画像引用:https://nesn.com/2022/09/bruins-goalie-outlook-linus-ullmark-jeremy-swayman-to-handle-duties-2/

完封数(Shutouts)は、その名の通り、1試合を通して失点せず、全てのシュートをセーブした試合数をカウントするスタッツです。
略してSOと表記されます。

もし、試合の途中で、そこまで失点していないにも関わらず、控えのゴールキーパーと交代してしまった場合には、完封数にカウントされません。

同じく、NHL Statsにあるデータを使って、23/24シーズンに試合に出場したゴールキーパー合計98名を対象に、完封数のヒストグラムをざっと作ってみたらこんな感じ。

後述にもありますが、大体ゴーリーの1試合平均失点数(GAA)は3点前後。
1点も失点せずに勝利を収めることは非常に難しいです。

平均の完封回数は1.45回でしたが、0回のゴールキーパーは半分近くいます。
逆に6回もの完封数を叩き出したものすごいゴールキーパーが4人いました。

勝・敗・分(Wins-Losses-Ties)

勝・敗・分(Wins-Losses-Ties)は、あるゴールキーパーが、試合の勝ち越しゴール、または最後の同点ゴールが決められた時に氷上でプレーしていた場合に記録されるスタッツです。
略してW-L-Tと表記されます。

引き分けが存在せず、延長戦(Over Time)、もしくはPS戦(Shootout)によって必ず決着をつけるリーグにおいては、
勝・敗・延長勝・延長敗(W-L-OTW-OTL)
と表記したり、

NHLのように
延長勝ちを、通常の勝利と同じ価値とし、
延長負けを、通常の敗北と同じ価値とはしない
ようなリーグでは
勝・敗・延長敗(W-L-OTL)
と表記したりします。

NHLにて、19勝、10敗、3延長勝、2延長敗を記録したゴールキーパーについては、
22-10-2(W-L-OTL)
と表記されるよ!

これらが記録されるのは、1試合あたり各チームのゴールキーパー1人ずつです。

もし途中でゴールキーパーを交代していたチームは、どちらかのゴールキーパー1人に対してのみ、このスタッツが記録されます。

セーブ系スタッツ

被シュート数(Shots against)

被シュート数(Shots against)とは、失点したか否かに関わらず、そのゴールキーパーが相対したシュート数を記録するスタッツです。
略してSAと表記されます。

このスタッツ自体はそれほど重要ではありませんが、後述のセーブ率のスタッツに大きく影響します。

セーブ数(Saves)

セーブ数(Saves)とは、ゴールキーパーがセーブした回数を記録するスタッツです。
略してS、もしくはSVと表記されます。

純粋にゴールキーパーの貢献度を表す指標です。

しかし、ゴールキーパーのセーブ数が少なければ少ないほど、相手にシュートを打たせていないとも考えられるため、一概にこの数値が高ければ高いほど良いとは言えません。

本当にゴールキーパーが注目すべきスタッツは後述のセーブ率です。

セーブ率(Save Percentage)

セーブ率(Save Percentage)とは、そのゴールキーパーが相対したシュートに対して何%の割合でセーブしたかを表すスタッツです。
略してSV%と表記されます。

セーブ率(Save Percentage)は
セーブ数(Saves)/被シュート数(Shots against)
という式で計算されます。

例えば、
被シュート数が30本
その中で相手に3本のゴールを許してしまった場合、
セーブ数27本 / 被シュート数30本 = 0.90
つまりは90%であるということが分かります。

これは、そのゴーリーが1つのシュートを何%の確率でセーブするか、ということを示す指標です。

チームのディフェンス力によって、相手チームから放たれるシュートの質が変わるという問題点はあるものの、全てのゴールキーパーが最も意識すべきスタッツの1つだと言えるでしょう。

大体実力が均衡しているリーグでは、平均セーブ率は大体90%前後に落ち着きます。

世界最高峰アイスホッケーリーグNHLの公式のスタッツ保管サイト、NHL Statsにあるデータを使って、昨シーズン(23/24)における試合出場数10以上のゴールキーパー合計72名を対象に、セーブ率のヒストグラムをざっと作ってみたらこんな感じ。

平均セーブ率は90.4%であり、その周辺に綺麗に分散しているように見えますね。

昨シーズン最もセーブ率が高かったゴールキーパーはFrederik Anderson(CAR)の0.932(16試合出場)。
逆に最もセーブ率が低かったのはAntti Raanta(同じくCAR)の0.872(24試合出場)
でした。

この2人が、同じ100本シュートを受けた時
Frederik Andersonは93回シュートをセーブし、7回失点します。
Antti Raantaは87回シュートをセーブし、13回失点します。

どちらを選びたくなりますか?簡単な選択ですよね?

1試合平均失点数(Goals against Average)

セーブ率(Save Percentage)と同じくらい大事なのが、1試合平均失点数(Goals against Average)です。
略してGAAと表記されます。

その名の通り、1試合(60分)あたりの失点数を示すため、低ければ低い方が良いです。

その選手の所属するチームによって、ピンチとなる回数や被シュート数は変動するため、セーブ率(Save Percentage)ほど重要ではないですが、かなり重要なスタッツの一つです。

シーズン中の1試合平均失点数(Goals against Average)は
総失点数(Goals against)×60/プレー時間(Minutes Played)
で計算されます。

例えばとあるゴーリーが合計300分(ちょうど5試合分)出場し、
その間に5失点した場合、
5×60/300=1.00
つまりはGAA1.00であることが分かります。

大体実力が均衡しているリーグでは、平均GAA大体3点前後に落ち着きます。
(反対に言えば、両チームおおよそ3点ずつ点を入れると言えますね)

同じく、NHL Statsにあるデータを使って、試合出場数10以上のゴールキーパー合計72名を対象に、GAAのヒストグラムをざっと作ってみたらこんな感じ。

平均GAAは2.91点であり、その周辺に綺麗に分散しているように見えますね。

昨シーズン最もGAAが低かったゴールキーパーは、セーブ率が最も高かったFrederik Anderson(CAR)の1.84(16試合出場)。
逆に最もGAAが高かったのはArvid Soderblom(CHI)の3.92(32試合出場)
でした。

試合に出場させた際の失点数が2倍違います。どちらを選びたくなりますか?
これも簡単な選択ですよね?

まとめ

分類スタッツ名略称
試合系スタッツ試合出場数(Games Played)GP
プレー時間(Total on Ice)
(もしくは”Minutes Played”)
TOI, MIN, MP, TIME
完封数(Shutouts)SO
勝・敗・分
(Wins-Losses-Ties)
W-L-T, W-L-OTW-OTL,
W-L-OTL
セーブ系スタッツ被シュート数(Shots against)SA
セーブ数(Saves)SV
【重要】セーブ率
(Save Percentage)
SV%
【重要】1試合平均失点数
(Goals against average)
GAA

スケーターのスタッツは以下で解説しております。

ではここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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