アイスホッケーは、両チーム5人のスケーターと1人のゴールキーパー、合計6人ずつでプレーするスポーツです。
しかし、アイスホッケーの試合では、ゴールキーパーが消え、ゴールがガラ空きになることがあります。
いったいなぜこんな事が起こるのでしょうか。
6人攻撃(Pull the Goalie)とは
試合終盤に負けているチームが、ゴールキーパーをスケーターと交代して6人全員で攻めまくるギャンブル戦術を6人攻撃といいます。
英語ではPull the Goalieと言います(直訳すると「ゴールキーパーを引き離す」)。
先述の通り、アイスホッケーは、両チーム5人のスケーターと1人のゴールキーパー、合計6人ずつでプレーします。
さらに、プレー中、いつでも自由に選手交代を行うことができるのもアイスホッケーの特徴の1つです。
この選手交代ですが、氷上でプレーするのが6人である限り、選手同士がポジション関係なく交代することができます。
このルール上、ゴールキーパーをスケーター(ゴールキーパー以外のプレイヤー)と交代することもできるのです。
通常より1人多いスケーターで攻め込むため、通常より得点のチャンスが増えます。
しかし、反対に自陣のゴールにいるはずのゴールキーパーがいないわけですから、相手チームはどれだけ離れたところからシュートを打ってもゴールの枠にさえ入れば得点することができます。
この6人攻撃(Pull the Goalie)は、どのようなタイミングで行うのでしょうか。
6人攻撃を行う場面
どうしても得点が欲しい試合終盤
試合終盤、残り時間1~4分になると、1~2点を追うチームは失点するリスクを背負って6人攻撃を仕掛けます。
Meghan Hall(2020)によると、NHLの2013-14シーズンから2019-20シーズンの7シーズンのデータを分析すると、スケーター5人vs5人(つまりは通常のイーブンストレングス)状態では、60分あたり2.25得点が期待できますが、6人vs5人(つまりは6人攻撃)状態では、60分あたり6.39点と、通常のイーブンストレングス状態から2.84倍もの得点が期待できるとのことです。
参照:Meghan Hall(2020)『The State of Goalie Pulling in the NHL』, HOCKEY-GRAPHS
世界最高峰アイスホッケーリーグNHLでは、3点差を追う状況でも6人攻撃を仕掛ける事が多々あります(そしてたまに同点に追いつくことに成功しています)。
相手が反則してディレイド・ペナルティ(Delayed Penalty)状態になった時
相手が反則プレーを犯して、ディレイド・ペナルティ(Delayed Penalty)状態になると、相手選手がパックを保持した段階で審判が笛を吹き、プレーが一時中断されるため、失点する可能性が無くなります。
この状態になると、反則プレーを受けた側のチームは6人攻撃を仕掛け、相手選手がパックを保持するまでの間ボーナスタイムとして相手ゴールへラッシュを仕掛けることができます。
しかしこの時、唯一注意しなければいけないのがオウンゴール。
ディレイド・ペナルティ中に、相手選手がパックを触らなくても、自分たちのパスミスや、不運なボードの跳ね返りによってオウンゴールしてしまったケースは稀にあります。
エンプティ・ネット・ゴール(Empty Net Goal)
ゴールキーパーがいなくなってガラ空きになったゴールのことをエンプティ・ネット(Empty Net)と呼び、そのガラ空きになったゴールに得点することをエンプティ・ネット・ゴール(Empty Net Goal)と呼びます。
この時のゴールは、それまでゴールを守っていたゴールキーパーはゴールを守っていないため、試合で残されるスタッツである失点・被シュート数にはカウントされません。
なお、このエンプティ・ネット状態であれば、なんと6人攻撃を守っている側のゴールキーパーも得点することができます。
世界で記録されたゴールキーパーによるゴールは、ほとんどがこのエンプティ・ネット・ゴールです。
スケーターでさえ、相手ゴールからかなり遠い自陣ゴールからシュートを正確に決めるのは結構難しいというのに…。
オーバータイム(Overtime)での4人攻撃
オーバータイム中には、両チーム通常より2人少ない、スケーター3人+ゴールキーパー1人の合計4人ずつでプレーされますが、この時にもゴールキーパーをスケーターに交代してプレーすることができます。
6人攻撃ならぬ、4人攻撃です。
「え!?負けていないのにリスクを背負ってギャンブル仕掛けるの!?」
と思う人が多いでしょう。
しかし
6人vs5人状況では、相手より1.2倍スケーターが多い状態。
4人vs3人状況では、相手より1.33倍スケーターが多い状態。
そして人数が少ないためリンクのスペースもかなり広くなり、
お互いにそこまでリスクを背負ってパックを奪いに行かないため、
パックをキープしやすくなります。
というわけで、スケーター6人vs5人状況よりも、スケーター4人vs3人状況の方がめちゃくちゃ有利なのです。
割とこの4人攻撃を仕掛けるチームは多いです。
しかし、NHLを始めとする主要リーグでは、この4人攻撃を制限するために、
「4人攻撃を仕掛けたが失敗に終わり、反対にエンプティ・ネット・ゴールを決められてしまったチーム」に対しては、通常では延長敗として与えられるはずだった勝ち点1を没収して、通常敗と同じ扱いにすることになっています。
それでも、リーグ終盤に差し掛かって、プレーオフへ進出するために勝ち点2(もしくは3)が欲しいチームは、この4人攻撃を積極的に仕掛けることがあります。
ゴールキーパーを交代させるタイミング
この6人攻撃を仕掛けるためにゴールキーパーを交代させるタイミングにも注意が必要です。
なるべく味方選手がパックを安全にキープしている状態で、ゴールキーパーを交代させる必要があります。
もし相手選手からのプレッシャーが強かったり、相手選手がパックをキープしている状態であるならば、すぐにエンプティ・ネット・ゴールを決められる恐れがあるためです。
まとめ
このことを理解しておくだけで、よりアイスホッケー観戦を楽しめるのではないでしょうか!
以上になります。最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!